恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
「瀬木さん……
ここの文法なんですけど‥‥
『ん?‥‥それはほら
ここを見て。ここがこうだろ?』
解りやすいし優しくて丁寧で、
難しい問題も解けると誉めてくれるし、
違うとちゃんと叱ってくれる
『じゃあここの問題を
明日までにやること。
今日は終わり。お疲れ様』
「はい、ありがとうございました」
午前のリハビリに
午後の勉強が終われば
やっと夕方から読書タイムに入れる
「瀬木さんはまだお仕事?」
『うん、あと少し』
顔色があまり良くないな……
テーブルの上には
自販機で買ってきたコーヒーの缶が
すでに2つ空になってる
「あの、私…向こうのソファで
本を読むからここで寝てください。
顔見れば寝てないの分かるから
倒れないか心配です。」
パソコンを打つ手が止まり
彼の綺麗な顔が私を見て
少し笑った気がした
『立花がそう言うなら少しだけ寝るよ』
デスクからソファに移動して
そのままもたれた瀬木さんは
やっぱり疲れてるのが見て分かった
甘えていいと言われてこんな広い部屋で
勉強まで見てもらって、何かこの人に
してあげられることが欲しい‥‥
昨日の続きの本を手に取ると、
もう一度ソファに向かって
ゆっくり足を出した
「(クッ………ツッ!)‥‥‥あっ」
『そういうところを甘えて』
左手で壁を支えるためあまり
右側に体重がかけれず
たった数歩なのに
時間がかかっていたら、本をとられて
瀬木さんの手が私の手を掴んでいた
「……寝てていいのに」
『じゃあいい子にここに座って』
「ありがとう‥‥
ベッドのシーツ変えてもらったから
ベッドを使ってもいいよ?」
今にも寝てしまいそうな瞳に
無理させてることが心配になる。
『ん‥‥大丈夫』
ドクン
私をソファに座らせて
一番離れた場所に座ったかと思えば
そのままこちらに体を倒してきた
「瀬木さん!?‥‥ここで寝るの?」
長い足は勿論ソファから放り出され、
私の座った左足に
頭が少しだけ触れている
横になった途端聞こえた寝息に
こんな体制ですぐ眠れるなんて
よっぽど疲れているのだろうと
余計に心配になってしまった
今のまま頑張れば
あと1月弱で退院出来るって
言ってもらえたから
少しでも早く退院して
瀬木さんにはお家に帰って貰わないと。
私は、膝にかけていたブランケットを
起こさないように彼にそっとかけた