恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
 目の前のソファに座って
 誰かと電話をする彼の後ろ姿を
 見つめて思う


 遠くから見てるだけでも
 幸せに思えた人が
 今、私の目の前にいる。


 それは本当に信じられないことだ。


 学生の時よりも低い声だけど
 線が細いキレイな手は変わらない



 初めて作った料理は
 本当に簡単なものだったけど、
 なにも文句を言わずに食べてくれて
 かなりホッとした。


『立花もここで食べればいい』


「あ‥‥‥はい」


 瀬木さんと一緒に食べてから
 後片付けをした私は、
 お風呂の準備を慣れない
 機械と格闘してから
 一旦部屋に戻った。



「はぁ……掛け持ちバイトより
 どっと疲れるかも。」


 バイトを掛け持ちしてた
 最近にしたら、この時間に
 家にいられることが不思議に
 思えるくらいなのに、
 気が張っているのか
 疲れ方が今までと違う。


 お母さんに
 お金のことで甘えたくないし、
 出来るだけ自分でやりたい。


 わがまま言って
 大学なんて来てるんだから。


 大きな欠伸をすれば
 どっと疲れていた私は
 ベッドの柔らかさに埋もれて
 簡単に意識が飛んだ




「‥‥‥ん」


 夏前のなんともいえない湿度に
 目が覚めると、
 変な体制で寝ていたのか
 体をコキコキと鳴らして伸びをした。


 あ……そうだった‥‥


 見慣れない壁紙に、
 ここは瀬木さんの家ということを
 忘れそうになるけど、
 やっぱり夢じゃないんだね‥‥


 ん?
 寝惚けた頭でスマホを開けば
 メールが数件届いていた


 彩と、バイト先で仲良くなった
 友達からだ‥‥
 みんな優しいな‥
 突然辞めたのに連絡くれるなんて。
 

 返信をしたあと
 大きな欠伸をまた一つし、
 着替えを持った私は
 お風呂場へ向かった。


 あれ‥‥‥‥
 まだ電気が点いてる‥‥


 リビングに降りた私は
 仕事部屋から漏れる光の方を
 静かに見つめた


 もうすぐ夜中なのに
 まだ仕事してるんだ…‥‥


 アシスタントの
 詳しい仕事内容は分からないけど、
 落ち着いたら瀬木さんの本を
 いつか読んでみたいな‥‥


 お風呂に入った後髪を渇かして
 静かにキッチンへと向かった


「ふぅ……暑い」


 喉が渇いた私は冷蔵庫を開けて
 買ってきておいた
 ミネラルウォーターを取り出した


 カチャ
< 16 / 147 >

この作品をシェア

pagetop