恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
始まりの合図


 『‥‥り、起きて……
 ねえ、起きてって』


 「…………」


 久しぶりに懐かしい夢見てるんだから
 もう少し‥だけ‥‥

 
 懐かし過ぎて
 いい夢なん‥だから‥‥‥


 ん?

 ゆ‥め‥


 ……夢!!?


 ガタッ!


 勢いよく体を起こせば
 そこはやっぱり現実で、
 目の前に仁王立ちしていた
 助教授に血の気が引いていく



 隣に座る親友の彩に助けを求めるも
 肘をついて反対方向を
 向かれてしまったのだ。


 ど、どうしよう‥‥‥‥
 ……この状況はとっても不味い


 「えっ‥‥と…ですね…」


 『俺の授業で寝るとはいい度胸だな?
 お前がどうしても文芸を
 専攻したいって言っていたのは
 空耳だったか?』


 「‥‥(はい、空耳じゃありません。
 その通りです!!)」


 他の生徒たちの視線と笑いを
 いっせいに感じながら
 首を大きく左右に振る


 寝ていた私が悪いので仕方ないが、
 回りの生徒の笑い声を
 全身で受け止めることになり
 ものすごく恥ずかしい思いをした


 でも自業自得だ。
 どうしたって時間は巻き戻せない。


 『お前授業終わったら残れ』


 ええっ!?
 それは困る!!


 言い返そうと
 助教授の顔を見上げれば、
 物凄い怒りの剣幕の表情に
 血の気が引くどころか冷や汗が流れる


 あぁ……最悪だ。


 この講義終わったらバイトがあるのに
 これじゃ完璧遅刻だ……


 先生が講義室の階段を下りて行く中、
 うな垂れて座る私に
 隣から聞こえたのは親友の声だった


『‥あんたバイトし過ぎなのよ。
 そんなにまだ生活苦しいの?』


「…そっとしておいて‥
 今、地味に落ち込んでるから。」


 昨日も夜中までバイトした後、
 レポートと課題をやってたら
 いつの間にか朝方になって
 仮眠程度しかとれてないのは事実


 見つかった相手が相手なだけに
 溜め息が溢れる



「はぁ‥‥‥」


 あれ‥‥?
 そう言えばさっきまで
 どんな夢見てたんだっけ‥
 懐かしいような
 そうじゃないような‥‥
 



 『で?
 勤労なのは構わないけど、
 俺としては学費を出してやってる分
 ちゃんと学んで貰わねぇと
 困るんだけど?
 ‥っておい!聞いてんのか?こら』


 立ち尽くす私は、
 助教授に丸められたノートで
 軽く頭を叩かれてしまった


 皆が教室から出ていった後、
 約束通り帰れるわけもなく
 説教をされているのだ


 説教されてるにも関わらず、
 バイト仲間に少し遅れると
 メールをしてたのがバレていたから
 余計に怒らせる羽目になる


「……ごめんなさい」


『はぁ‥‥
 謝るくらいならしっかり学べ。
 それより生活大変ならそれぐらい』


「い、いいよ!!!
 学費だけで助かってるから!!」
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