恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
 あの時はすぐに気づけなかったけど
 今思えば、きっとこの時が
 恋の始まりだったのかもしれない



 元々小さい時から人見知りな私は、
 昔から友達も限られているのに、
 高校入学を機に
 仲のいい友達と学校が
 離れてしまったから、
 緊張のあまり、クラスの子にも
 自分から話しかけることも
 できずにいた。



 すごく内気かと言えば
 そうじゃないけれど、
 慣れた人じゃないとなかなか
 リラックスして上手く話せないだけ


 小さい頃から本を読むのが大好きで、
 この高校の図書室の本の所有数が
 都内で一番多いというだけで、
 友達と離れてしまうのに
 志望校としてしまう
 単純な動機なほどだ。



『‥‥矢野ってなんか
 小さくて可愛いな。』


「えっ?」


 矢野って呼ばれただけでも、
 また顔が熱くなる始末。
 


 それなのに、去り際に
 彼の長くて綺麗な手が
 私のショートヘアを撫でるだけで、
 電気が走るように心が震えていく


 可愛いなんて
 初めてそんなこと言われた‥‥



 髪はショートボブで
 みんなみたいに綺麗に
 巻いたりもせず、
 女の子らしくもない。


 周りのみんなが
 ヘアメイクに興味を持つ中
 ほとんどノーメイクの私


 なのに可愛いって‥‥
 嬉しいけど‥お世辞だよね?



 『これ読み終わったら
  矢野に直接渡すから』


 触れられた頭がずっと熱を帯びて
 私は俯いたまま返事もできず
 その場から暫く動けなかった




 
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