恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
 この都内の大学で
 文芸専攻の助教授(成り立て)
 をしているのが私の兄。

 立花 櫂(かい)
 私の大切な大切な家族だ。


 本が好きなのも、
 年が離れた兄の影響で、
 家では沢山の本に囲まれて育ったから
 2人とも外で遊ぶより
 本を読んでいた時間の方が長い。


 8つも年上だけど、
 面倒見のいいところだけは
 今になっても日々感謝している


 シングルマザーで苦労した
 お母さんの変わりに、
 こうして行けないと思っていた
 大学に通わせてくれているのは
 優しい兄のお陰だから


『はぁ‥‥お前さちょうどいいわ。
 もっと割りのいいバイトしないか?』


 えっ!?なにそれ‥
 割りのいいバイトって
 変な仕事じゃないでしょうね?


 夜の世界とかだったら今よりもっと
 授業なんて起きてられなくなるよ?


『今バイトいくつ掛け持ちしてんの?』


 そんなのわざわざ
 数えたことなかったけど‥‥


 レストラン
 パン屋
 それに最近始めたネカフェでしょ?
 土日は時々図書館の整理に清掃
 あとは……


 指を折りながら
 頭の中で数えていれば、
 お兄ちゃんにさっさと阻止され
 溜め息が届けられた


『それ今すぐ全部辞めろ!』


「はぁ!?そんな、む、無理だよ!
 ‥‥‥家賃払えなくなるし。」


『だぁから割りのいいバイトやるって。
 本が好きな知り合いに本関係で仕事
 頼まれてるからいいだろ?』


 本!!?


 その言葉に、
 さっきまでの意志の固さも緩み
 呆気なく興味深い方へと
 寄せられていく。



 『ハハッ‥決まりだな。』


 頭を撫でる手に、
 いつまでも子供扱いされてて
 自立できてない自分が
 情けなく感じたけど、
 少しだけ楽しみになっていた。
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