恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
瀬木 遥 side


『‥‥んっ‥』


ゆっくりと瞳を開けて視線を傾けたら
一番にうつったのは立花の寝顔だった


サイドテーブルに置かれた
時計に目をやれば
もうすぐ朝の五時


外も既に明るい
日の出が早い季節なだけに、
部屋に入る日差しがすでに夏の色だ


『(…あれから…
 ずっとここにいたのか?)』


両手をベッドに乗せたまま
俯いて眠る彼女の顔にかかる前髪を
指先ではらう


……瞼が腫れてる


もしかしなくとも
泣かせてしまったのか‥‥


俺が変なメールしたから
多分混乱しただろうな


他の誰でもなく、
立花に連絡したことに気付いたのは
送信してからで後悔した


朦朧とする意識の中だったから
あまり記憶がないけど、
彼女が大きな声で
俺の名前を呼ぶ声だけは聞こえてた


ここに来てからも
あまり心から笑わない立花


昔は見かければ
本を読んでいるだけなのに
表情豊かでほんの世界に
入り込んでいたりしてたのに‥


眠ってるのをいいことに
白くて柔らかい立花の頬や肌に
手の甲を触れさせる


6年前と比べて可愛い子から
随分綺麗になった‥‥‥



『(聞きたいことは沢山ある。
 でも立花から言うまでは待ちたい。
 やっと会えたのだから…)』


側に置いてあったブランケットを
そっと彼女にかけてから
無防備に置かれた手を握り
また瞳を閉じた


瀬木 side 終
< 40 / 147 >

この作品をシェア

pagetop