恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
2人がどんな先輩を知ってるのかは
分からないけど、
私は一緒に過ごせた6年前の数ヶ月と
今の瀬木 遥の顔をした作家としての
先輩しか知らない



「高城さんたちは
 そんなに休んで
 お仕事とか大丈夫なんですか?」


別荘に行くからと言っていたけど、
出版社って忙しいイメージなんだけど。


『勿論仕事で行くことになってるから
 有給でもなく出張よ。』


えっ?


『そうそう、
 出せば必ず売れる
 瀬木の原稿貰うためなら
 北海道‥いや海外でも行くさ』



海外って‥‥


でも瀬木さんって
やっぱりすごい人なんだ‥。
もっと早くに瀬木さんの本を
沢山読みたかったな‥‥


あの若さで誰もが作家になれる
わけじゃない。
別世界で生きてるって
どんな感じなんだろう。


こんなに近くにいるのに
瀬木さんの世界がまだ分からない‥‥



暑いのに夕食にカレーを作ったのは、
高城さんたちが食べたいと
リクエストをくれたから


『仕事終わったなら帰れよ。
会社空けすぎてクビになるぞ?』



いつもは二人で食べる
広いダイニングテーブルが
4人も集まれば相当賑やかになる。


2人だとテレビから流れる
ニュースや洋画を見ながら食べてるから
今日はパーティくらいに感じてしまう


『日和ちゃん美味しい!
 毎日食べてる隼人が羨ましい‥』


「そんな……ありがとうございます。
 お世辞でも嬉しいです」


和木さんがおかわりをしてくれ
2杯目をお皿に盛り付けて渡す


カレーなんて煮込めば
誰でも必ず出来るから
手抜き料理に入るし、
誰でも作れるから美味しいはず。


『ほんとだよ?
 それじゃあ‥‥
 今度うちにも作りに来る?』


『食ったらとっとと帰れ!
 万年営業が』


『瀬木さん!!」


全くほんとにこの2人は
年が離れてるのに
よくこれだけ言い合える。


和木さんも暴言吐かれても
気にせずヘラヘラしてるし、
高城さんなんて慣れてるのか
間にも入らない。



『それじゃ、先生、
 また長野でお会いしましょう。
 日和ちゃんまたね。』



二人を見送った後
リビングに座り
珍しくテレビを見ていた瀬木さんに
淹れたてのコーヒーをそっと置いた



『疲れただろ、大丈夫か?』


トクン
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