恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
やっぱり雰囲気が柔らかい……
まるで昔の先輩のように


「いえ‥楽しかったです。
 ……あの、夏休みにの宿題に
 歴史の課題があるんですけど、
 後で本棚を
 見せてもらってもいいですか?」


大学の図書室で借りてくればいいのに、
歴史関係は貸し出しが難しくて
持ち帰ることが出来ないものが多い


『歴史?』


「はい……何かおすすめありますか?」


『別荘にここより本が沢山あるから
 向こうで課題をやればいい。』


えっ!?沢山あるんだ!!
どうしよう‥
すごく楽しみかもしれない。
こんなにも長く旅行に
行くのは初めてだし、そこで
大好きな本が沢山読めるなんて‥‥



『……初めて笑ったな』


「えっ?……そ、そうですか?
 仕事のお手伝いで行くのに
 本が読めるのが楽しみで、つい。
 向こうで何でもしますから
 言ってくださいね。
 私、お風呂沸かしてきます」


浴槽にお湯を張りながら、
顔の筋肉が緩んでいくのを止められない


先輩と一緒にいられる。
それでじゅうぶんだと思う。
ここに来なければ
もう会うことの出来なかった
人だと思うから‥


部屋に戻り、
彩にメールをすると
すぐに行けると返信があった



コンコン


「はい」


カチャ


『あのさ、これ少ないけど給料』


「えっ!?ダメですよ。
 何だかんだで家賃も払わずで
 生活費も瀬木さんから貰ってるし、
 大したことしてないのに貰えません」



『俺が雇い主だから。
 立花はほんとに
 よくやってくれてるから貰って?
 それで明日旅行用に
 何か買ってくればいいよ。』


ドクン


去り際に見せた笑顔に
胸がどうしようもなく熱くなる


よくやってくれてるから……なんて
今の言葉だけで泣きそうだ。


封筒の中を開ければ
入っていた諭吉の枚数に驚き
眩暈がする


瀬木さん天気‥これは
全然少なくないし‥‥


家政婦と
アシスタントだけしかしてないのに、
バイトを沢山
かけもちしたくらいのお給料。


割りがいいとはいえ嬉しいけど、
やっぱり申し訳ない
気持ちになってしまう


もう返すわけにもいかないし、
言ったとしても瀬木さんは
絶対受け取らないって分かる。


だからこれからも頑張ろう
私にはそれしか出来ないから。



明後日から旅行か‥‥


2週間どうなるか分からないけど、
少しでも先輩といられる時間があるなら
私なりに向き合おう、そう思った。

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