恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

コンコン

「失礼します」



まだ裸だったら困るから
そーっとドアを開けてみた


ふぅ……良かった‥‥服着てる



「遅くなってすみません」


『いいよ、こっちに来て』


瀬木さんのデスクの向かいに
用意された椅子に腰掛けると
目の前に一枚の用紙が置かれた


『いきなり書くのは難しいと思うから、
 今から言う事に対して
 自分が思うイメージを書いて欲しい』



えっ?
イメージ?


私の隣に立つ瀬木さんの体から
石鹸のいい香りがする。


その瞬間さっきの半裸体が浮かび
頭の中から消すために
こめかみをグリグリと押さえた


『立花?』


「あ、えっ?大丈夫です!
 お願いします」


『じゃあまずはここに
 書いてある言葉に対して
 言葉でも文でも
 絵でもいいから書いてみて?』


「はい、やってみます」


瀬木さんは
向かい側の椅子に腰掛けると、
眼鏡をかけてノートパソコンを開いた


寝てないのにまだ仕事するのかな……


手渡された紙を見つめながら
一問ずつ紙に書き始めた私


うーん‥‥どうしよう‥
案外難しい…


例えば信号機に対して思うのは三色?
それに点滅っていうイメージが沸くけど
こんな答えでいいのかな‥‥


普段こういうのを考えたことのない私は
瀬木さんがこちらを見てるのも知らずに
何とか十問を書き終えた


「出来ました」


私の声にパソコンのキーから離れた手が
差し出した用紙を受け取り
目を細目ながら見ている


瀬木さんはどうしてこんな
テストのようなことをさせるのだろう…


静かな空間の中で、
私の書いたものに何かを書き始めたから
気になってそわそわしてしまう



『立花、はい』


「あ、ありがとうございます」


卒業証書を貰うかのように
両手でそれを受け取った私は
赤ペンで沢山書かれたそれに目を凝らす


私が先程書いた
信号機に対する三色や
点滅のところに補足がある


どういう三色なのか……
どう点滅してるのか?
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