恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

あの後
時々私に声をかけてくれるのが
本当に嬉しかったのに、
突然決まった両親の離婚で
急遽母方の実家の北海道の高校に
転校せざるを得なくなった


もう先輩に会えなくなるんだ‥‥。
都内と北海道って子供が
簡単に行ける距離じゃない。


シングルマザーになった母は
大学に通う兄の学費や仕送りで
余裕なんてなかったから、
母の実家に私だけ連れていき
兄は一人暮らしをするために
こっちに残ることになった。


先輩に彼女がいるとか
そんなことはどうでもよくて、
大好きなあの図書館で
先輩にもう2度と会えないって
考えるだけで涙が止まらなかった


そして

この高校に居られる最後の日


私は大好きなはずの先輩を
傷付けてしまったんだ‥


『矢野‥‥‥ごめん』


そう一言言われたのが最後


あんなことになるなら
何も話さないで転校すれば良かった


先輩は何も悪くないのに
酷く傷付けて、自分も傷付いて、
何がしたかったのかも分からずに
帰宅した後ずっと泣いた


転校してからは
先輩のことは胸の奥にしまい込んで
思い出さないように
鍵をかけたつもりだった初恋



今の私があの時の矢野だと知られたら
もう一緒にはいられなくなる


でも、
いつまでももう隠しておけない


騙すことになっているのには
変わらないし、何よりもう私が苦しい


優しくされればされるほど、
私はどんどん先輩をまた
傷付けていくようで怖くてたまらない


旅行が終わったらちゃんと話そう‥
今度傷付くのは私だけでいいから


涙が出て来てしまった私は、
机に突っ伏して声を殺して泣いた
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