恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

『‥ここにいた』


声がした方を見上げれば、
まだ少し眠そうな瀬木さんがいて
昨日のようにまた隣に座ってきた



『起こしてって言ったのに』


「ごめんなさい……
 瀬木さん寝不足だから
 少しでも寝てほしくて」



『立花は気を使いすぎ』


ドキン



駄目だ……


瀬木さんが側にいるだけでも
体温が上がるのに
抱き寄せられると心臓が騒ぐ


そんな緊張している私の顎を
持ちあげられると
ゆっくり触れてきた唇に
読んでいた本を落とした



「‥‥瀬木さ‥‥んっ」


瀬木さんの事は大好きだけど、
昨日の今日で気持ちがようやく
スタートラインに立てたばかりの
私には心臓がもたない



瀬木さんの手が触れる場所

優しく笑ってくれる顔


コーヒーを飲みながら
新聞を読む時の仕草


そんなどんな小さな事でも
心臓がこんなにも高鳴るのは
この人だけだと思う



「‥‥ンッ」


リップ音と共に唇が解放されると、
顔が真っ赤であろう私を見て
クスッと笑った瀬木さんは
もう一度優しく抱き締めてくれた




『歴史の資料?』


「……すいません
 仕事中なのに探してしまって」


『敬語』


「えっ?」


『最初にも言ったけど
 もう使わなくていいよ。』


そんなこと
言われても………


肩に回された腕に引き寄せられた体が
瀬木さんにもたれかかる


『俺は立花の事やっと掴まえられた。
 だから立花も安心して
 いつも通りにしていいよ。』


瀬木さん……


瀬木さんの胸にくっついた耳元へ
私と同じような早い鼓動が届いてくる


あんなキスの後で
冷静で落ち着いてるかと思えば
鼓動の速さは同じで何だか嬉しくなった



「私、普段通りにしたら
 言葉づかい悪いですよ?」


『クス‥‥そうなんだ。
 是非聞いてみたいね』


「瀬木さんのこと
 叱ったりするかも知れませんよ?」


『ハハッ‥それは楽しみだ』


「それに」


『立花はそれでいいんだよ』



瀬木さんはまるで
どんな私でも受け止めてあげると
言ってくれているようで
私は安心して
そのままその腕に包まれた
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