恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
『立花………
 感情移入し過ぎだから
 ‥‥‥‥‥‥ほら、おいで』

「‥‥瀬木さ‥‥‥ヒック」


物語は結末を残して終わっていたが
私は目から溢れる涙を止められずにいた


瀬木さん‥‥
こんなお話が書けるなんて‥


私は初めて瀬木さんの
作品を読んだけれど
心からすごいってそう思える。


この人は本を書くために
ここに生きてるんだって‥‥


肌寒い軽井沢の夜。
瀬木さんの腕の中は、
本に囚われた私の心を
ゆっくりと落ち着かせていく


『立花は昔から変わらないな……
 感情豊かでほっとけない』


また仕事の邪魔を
してしまっているのに、
もう少しだけこうしてて欲しい。


そうでないと、
行き場のない感情が溢れて
いつまでも現実に戻れないから。


泣く私の髪を整えていく
長い指が頬を包み込むと
優しくこめかみに唇をよせた



「………‥‥ごめ‥なさい」


『どうして?
 それが立花の正直な気持ちなら
 書き手はこの上ない幸せだけど?』





「‥‥瀬木さん
 すごく素敵なお話に
 出会わせてくれてありがとう。
 私‥頑張って書いてみます」



『どういたしまして』


そっと影が落ちると、
泣きながら笑う私の唇に
落とされたキスが
今までで一番長くて優しいキスだった




次の日の朝


爽やかな軽井沢の別荘に
何かが乗り移ったかのように
具合の悪そうな大人が3名いる


『日和ちゃ……水』


『立花‥‥ほっとけ。
 おら自分で歩け!
 飲みすぎなんだよお前らは。』


「瀬木さん!!
 ……高城さんたち
 ちょっと待っててくださいね」


2枚は作品が書き上がるまで
自由時間なため、
旅行気分でテンションが上がり
開放的な場所で
朝方まで飲み続けた。


一番機嫌の悪い残りの1人は
執筆を朝方まで行い
寝不足の為こんな感じだ。


2人にお水と仲さんが用意してくれた
2日酔いの薬を渡すと
昼まで寝るとまた寝室に行ってしまった



『はぁ?何しに来たんだアイツら‥‥』


「きっと毎日忙しいから楽しいんだよ。
 瀬木さんもお疲れ様。
 少し休めそうなら寝れますか?」


昨日瀬木さんの仕事部屋を出たのが
夜中の1時


まだラストを残してるって
言ってたから私も気になってたけど、
寝不足からか部屋に戻れば爆睡できた。


瀬木さんに眠いなら
ここで寝ていいと言われたけど、
落ち着いて寝られないと断って
部屋に戻った


『ん‥‥シャワーいく。』


「ふ、服着てきてね!」


『…クス……考えとく』


考えなくても普通に着て欲しい‥
私が慌てるのわかってるから
からかわないでほしいのに。


みんなのお世話をしていたら
すっかり時間が経ってしまい、
風が気持ちいいテラスで
遅めの朝食を
食べることになってしまった
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