【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について
プロローグ


目覚めると、イケメンおじさまが優しい笑みを浮かべていた。

剣と魔法が支配する世界の帝国セインタスが誇る軍人貴族ベルト様。

ああ、今朝もなんて素敵な微笑。

ぎゅうとクッションを抱き締める。
同時に忘れたくても叶わない事実を思い出す。

今度出る新作ではもうベルト様に会えないんだ……。

しくしくと胸が痛むのを感じながら寝返りを打った途端、私は硬直した。

目の前に抱き枕ではなく熱い体温を放つ男性が眠っていたからだ。

しかも目を見張るようなイケメンが。

その完璧なまでに整った顔は毎日見ているもので――。

「えええ!」

私は素っ頓狂な声をあげて肌掛け毛布と一緒にベッドから転がり落ちると、さらに愕然とした。

目の前で眠るイケメン――私の上司である高坏悠悟社長が一糸まとわぬ裸体でして、そして私も同様に素っ裸だったからだ。
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