【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について
「俺が愛するのは彼女ひとりです。あなたや他の女性を愛することは絶対にありません」
『ならばその女性を連れてきてください』
「え?」

微塵も動揺することなく切り返してきた言葉に俺は耳を疑った。

『今日お電話したのは改めて父と私との三人でお話合いをしたいと思ったためでした』
「お父上と?」
『ええ。その場にその女性を連れてきてください。そして結婚することをその方の口からお聞かせください』
「それは難しいです。まだ俺が一方的に思っているだけで彼女は……」
『そのくらいしていただかないと困りますわ。あなたが婚約者だと信じて待ち続けた私の時間はけして戻ってこないのですよ』

そう言われると言い返す言葉がない。

舞佳さんと彼女の父親にはそれぞれ直接会って婚約解消の気持ちを伝えていたが、三人そろっての話し合いはしたことが無かった。
いい機会だからはっきりしっかりと自分の気持ちを伝えようとは思うが、さすがに美香までは呼ぶのは難しい。

だが、そろそろ潮時だ。

美香とのこの中途半端な関係も終わりにしなくてはと思っていたところだ。

「わかりました」

俺は強い口調で応じた。

「近々、彼女と一緒に話し合いの場につきます。その際には必ず婚約解消の意を受け入れていただけますね」

 舞華さんの了承の言葉を聞いて俺は電話を切った。
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