【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について


まだ社長の唇のぬくもりが残っていた。

昼間にキスされたのは初めてでびっくりした。

せめて仕事中は冷静な秘書モードを貫いていたかったのに、あんなことをするなんて反則だ。

いつものカフェでサンドイッチとコーヒーを注文したものの、少し口につけただけで食べる気が起きなかった。

ずっとドキドキしていて、物が喉を通らなかった。
今まで社長と送ってきた濃密な夜の記憶が鮮やかに甦ってきて体の芯が熱くなる。

しっかりしてよ私。

こんな関係どう考えてもおかしいじゃない。
弱みを握られて体を弄ばれているだなんて、あってはならないことだ。

社長は不特定多数の女性と関係をもつことになんの抵抗感も持たない人なのだから、私だってしょせんは遊びに過ぎない。

現に社長室を出る時にかかってきたさっきの電話だって怪しい。

相手は時折かけてくる会田と名乗る女性だった。

若くてかわいい声をした人でどこか上品な感じもして、きっと外見も素敵な女性なのだろうなと想像できた。

仕事相手という様子ではなかったので、きっと付き合っている女性のひとりなのだろう。社長も「舞佳さん」と名前で呼んでいたし。
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