【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について


食事は誘いを受けた週の土曜にすることになった。

社長が高級外車に乗って家の前まで迎えに来てくれた。

フォーマル仕様の少し光沢が入っているグレイのスーツ姿の社長が車のドアを開けてエスコートしてくれる光景はたまらなく素敵で、見慣れた自宅前が突然エレガントな空間になったような気がした。

向かったのは五つ星ホテルの最上階にあるレストランだった。

「ワンピース、すごくよく似合っているな。綺麗だ」

私がジャケットをクロークに預けると、すかさず社長が褒めてくれた。

ワンピースは黒地にひざ丈までのタイトスカートというデザインだった。
ノースリーブで胸元が大きく開いていて、ダイヤが輝くネックレスがよく映える。

これほど素敵なものを揃えてもらったのならメイクやヘアメイクも相応しいものにしなければと思いサロンに行った。

いつもはひとつに縛るだけの黒髪も、エレガントさが出るよう緩くウェーブをかけてもらって編み込みを入れてハーフアップにしてもらい、メイクも上品な大人に見えるようほどこしてもらった。

「普段でも十分綺麗だが、今夜は見違えるようだな」

社長はとても気に入ってくれたようで満足げに微笑を浮かべている。
どこか熱をはらんでいるように感じる眼差しを向けられて、私は強張った笑顔を作る。
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