【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について

「美香、俺は君のことを本気で愛している。ずっと前から好きだったんだ」

私はしばらく口をパクパクとさせ、どうにか声を絞り出した。

「で、でもこれは体だけの関係じゃ……」
「君を手に入れたくて言った方便だ。君は二次元のキャラに夢中で俺のことなど眼中にないようだけれども、これからは俺だけを見てくれないか」
「うそ……」

社長みたいな素敵な男性が、私のような女を好きになるはずがない。

そう思う私の脳裏に社長と交わしたやり取りが甦った。

『二次元だろうが三次元だろうが、生きる喜びを持つことは素晴らしいことだ』

あの時私に言ってくれた社長の言葉に私は救われた。

社長を信じたい。

でも、だったらあの電話の女性は誰なの？

喉の奥までその疑問が来ていたけれども、怖くて口にできない。

もし社長に裏切られたら、私はあの時の前秘書の女性のように涙をながすことになるのだろうか。