【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について
私に惹かれたために婚約を断ったものの彼女は一向に了承せず結婚を望み続け、しまいには悠悟さんの会社にまで連絡をするようになったのだという。

会田さんからの電話を出た時、どことなく顔が強張っているように見えたのはそのためだったのだろうか。

そんなことを考えながら、私は最後に送られてきた長いメッセージを読み始めた。

【「他の女性」という君の言葉を聞いて君が何か大きな誤解をしているんじゃないかと思った。今は前秘書について急いで経歴を調べているところだ。彼女は舞佳さんから紹介を受けた人物だったが、入社して数日で俺に関係を迫ってきて俺は手を焼いた。職務怠慢を理由に解雇してもしつこくて、会社の裏口で俺を待ち構えているなんてことはしょっちゅうだった。実は君とホテルに泊まった前日も突然現れて復縁をせまってきたんだ。彼女のしつこさは異常だった。けれどもどこか違和感はあった。俺への執念というより何か別の目的があって俺に付きまとっているような気がしたんだ。もし彼女のことで俺の勘が当たっていたら改めて君に説明を……】

会場の照明が落ち、ミュージカルの始まりを告げるアナウンスが響いた。

私は仕方なくスマホの電源を切った。
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