【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について
悠悟さんの言葉を聞こうとせず、ひとりで勝手に誤解して思いつめてしまったのだ。

今すぐ悠悟さんに会いたい。

私は会場の出入口へ向かって走り始めた。
するとスマホに電話がかかってきた。

悠悟さんからだと確認するなり、私は震える指でスマホを耳に押し当てた。

「よかった、やっと出てくれたな……」

安堵したような低い声が耳を打った。

その瞬間、私は涙を零していた。
ベルト様に似ているからじゃない。大好きでたまらない人の声だからだ。

「ごめんなさい悠悟さん、私が全部間違っていました」

泣きながら言う私に彼は驚いた。

「どうした、なぜ泣いている？　今どこにいるんだ？」
「第一品田記念ホールです。これから会いに行ってもいいですか？」
「もちろんだ。南口から出られるか？」

そこは私が出ようとしていた所だった。

駆け抜けると、見覚えのある高級外車が停まっていて悠悟さんが優しい微笑を浮かべて立っていた。

私が観に行きそうなミュージカルを調べて待っていてくれたのだろう。
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