【悲報】冷徹上司の毒牙にかかり推しごとがはかどらない件について
私は彼に抱きついた。

悠悟さんの熱い抱擁に包まれ、私は「ごめんなさい」と繰り返して泣きじゃくった。

車の中で泣き止んで落ち着いた私に、悠悟さんが始終を説明してくれた。
おおよそ私の予想通りだった。

「私があなたの言葉を信じなかったのがいけなかったんです」
「いや違う。すべて俺が悪いんだ。俺の恋愛に関する悪い噂を放置していたのが不味かったし、何より君を手に入れたいあまりに脅すような手段を使ったのが愚かだった。でも――」

悠悟さんは泣いて腫れてしまった私の頬に手を添えて、愛がこもった真剣な眼差しで私を見つめた。

「もう本当の気持ちしか言わない。美香、愛している。もう俺から離れないで欲しい」
「もちろんです」

思いが通じ合う喜びを初めて体験して、私は幸せを感じてまた泣いてしまう。

悠悟さんは涙を止めるかのように私の目元に唇を寄せると優しい口付けを落とした。
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