流れ星の一夜をあなたと

・流れ星に消えた想い

 冬の夜が好きだ。
 澄み切った空気、白く浮かぶ吐息、見上げれば群青色の空に散りばめられた星たち。
 世界はこんなにも美しいのに、なぜだか私は心にぽっかりと穴が空いている。
 
 理不尽な社会、冷え切った両親の仲。何もかもが嫌になり、気づけば外に飛び出していた。
 行くあてもなく自由気ままに歩いていると、アーケード内の街灯がその存在感を示すように煌々と光っているのが視界に入る。まるで吸い込まれるように、その商店街に足を踏み入れた。
 この時間まで開いている店はなく、全てシャッターが下りている。
 街灯に照らされたシャッターには、手書きの看板や古びたポスターが貼られている。その内容はもう読めないほど色褪せているが、かつてはこの商店街が賑わっていた証拠だ。
 ふと、昔ここを訪れた記憶が蘇る。あの頃は、家族でこの商店街を歩いたものだった。笑い声が絶えず、母が買ってくれた温かいココアの味が懐かしい。

 今やその温かさはどこにもない。家庭の中には冷たい沈黙が支配し、私はいつもその中で居場所を失っている。友人たちも、それぞれの道を歩み始め、私だけが取り残されているような気がしてならない。自分の未来が見えない不安が、胸の奥でじわじわと広がっていく。
 
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