美しい海はどこまでも

プロローグ

　すずめって可愛いなぁ。朝から癒される！ちゅんちゅん鳴いてるのも可愛い。愛おしい。

「行ってきまーす！」


　涼しい風が吹く。本当に気持ちいいなー！海辺に町に生まれてよかった！まぁ、髪の毛は少しバサバサするけど。

海を見れば嫌なことも全部、どうでも良くなるんだ。

「夏葉(なつは)おっはよ〜！朝から陽射しが眩しいね！」

「おはよう！愛美(あいみ)も今日も眩しいね！」

「え、何それ！そんなん言ったら夏葉の方が可愛いじゃん！って、この話はもうお終いね？」

私の幼馴染の倉木(くらき)愛美は、綺麗な長い黒髪をゆらゆらさせて学校へと自転車を漕いでる。

私とは家が離れていて、学校からも遠いのだ。彼女は私の自慢の友達だ。




　学校に着いたら既にたくさんのクラスメイトが居た。

今日も賑やかな教室に安心する。この空間が、私は大好きだ。

「ねえねえ伊藤(いとう)！今日も夏葉は可愛いよね？」

「はぁ？これで何回目？いいからあっち行け」

しっし、と手で愛美を追い払ったのは伊藤道琉(みちる)だ。目の下にホクロがあるのが印象的なんだ。

彼はスポーツマンで、常に日焼けしている。道琉はいわゆるサッカー少年と言うやつだ。

それに、私は知っている。愛美と道琉は両想いだってこと。密かに私は応援している。

「今日も伊藤は冷たいわー。絶対に照れてるだけだと思うけどね！」

彼女が伊藤呼びしているのは、下の名前で呼ぶのが恥ずかしいから。そのままタイミングが見つからないんだって。

そんな二人のことが私は大好き！早く結ばれてくんないかなー。



　チャイムが鳴り、みんなが席に着く。いつもなら先生はもう来ているのに、今日はまだ来ていない。

期間的には中途半端だとは思うけど、もしかしたらもしかするかも！

なんて、一人ワクワクしていたら予想が的中した。今は六月の中盤だけれど。

「すまん、遅れた。だが、実はいいお知らせがある」

そう言って、先生は廊下の方に目を向けて手招きした。

そして、教室に入ってきたのは新しく転校してきた男子だった。

「これから軽く自己紹介をしてもらう。静かに聞けよ」

みんなは返事ができないくらい、その子に夢中だった。何せ、顔がとても整っていたから。

「今日からお世話になります。佐藤美記(さとうみき)です。コンプレックスはこの名前です。これからよろしくお願いします」

教室がクスクスと言った笑い声に包まれた。

…あれ？おかしいなぁ。私の前の席だけが、空いている。もしかして、そう言うこと？

「と言う事で、お前らは他に気になる事があったら休み時間に聞いてくれ。佐藤は霜島(しもじま)の隣の席だ」

「分かりました」

ちなみに霜島は私の苗字で、席は真ん中の列の一番後ろの席だ。

いやぁ、それにしても私って、展開を先読みするのが得意なのかな？てか、これがありきたりなだけか。

佐藤さんは、男子にしてはかっこいいと言うより美しい顔立ちをしていて、身長は平均よりやや低めっぽい。

って言っても、少なくても百七十くらいの身長があるんだけど。

彼が席に座る時、ちらっと私の方を見ていた。

とりあえず、よろしくって言ったけど何も言葉は返される事なくそのまま一日が過ぎる。

なんか、独特の雰囲気がある人だなって思った。でも、この印象は少しちゃらめの男子にすぐに書き換えられることになる。