美しい海はどこまでも
「ふぅん?ま、それなら良いけど。でも、今日は俺と一緒に帰ろ?部活ないし良いよね?」
「……分かった。その代わりに、今日から一週間は一緒に帰らないから」
「…それはダメ。三日に一日は一緒に帰ろ?てか、帰る。そう言うことで」
はぁ?噂されたり、女子からの目線が酷くなって苦しいのは私なんですけど?人の気持ち、考えてよ。
なんて言い返す暇もなく、チャイムが鳴って帰りの活動が始まってしまった。
……私はどうしようもなく、今屋上に行きたいと思ったのだった。
あれから一週間が経った。
たまたま美記が入っているバスケ部に大会があるとかなんとかで、あの日以来一緒には帰っていなかった。
ただ、教室では結構話しかけてくる。愛美も最近は道琉と一緒にいることの方が多い。
……控えめに言って最悪だった。二人で何を話せば良いわけ?美記は話を振ってくれるけど、私はそれに返すだけ。
会話のキャッチボールは出来ていなかった。…それに関して言えば、百パーセント私が悪いのだけれど。
そして今、私は屋上にいる。美記の名前は伏せたけど、晴沢さんに愚痴を聞いてもらっていた。
「晴沢さんならどうしますか?」
「俺なら、無視するかも。俺さ、学校にも来てないことになっていると言うか、してるんだよね。下駄箱の靴は上履きだけ残ってて、外履きは置いていないんだ。学校に来ていないことにしておいて、俺はいつもずっとここにいるんだ」
初めて聞いた私は、彼の徹底ぶりに思わず笑ってしまった。
「…なんで笑うの?俺、結構真面目に答えたつもりなんだけど」
「だって、そこまでしている徹底ぶりが面白くて…ははは!」
やばい。久しぶりにこんなに笑ったかもしれない。なかなか口角が下がらないや。
そんな私を見て、晴沢さんも笑い始めた。今度は私が驚く番だった。
「なんか、キミ面白いね!ふふ、俺、霜島のこと気に入ったかも」
き、気に入った?私、そんな気に入って貰えるようなことしてないと思うんだけどなぁ。
まぁ、良いや。晴沢さんが笑ってるんだもん。
彼は笑い終わってから、ふと真剣な顔をした。
「俺さ、この高校に入学してからすぐ、いじめられたんだ。悪口を言われるとか、暴力を振るわれるとかじゃなくて、仲間外れにされる感じで無視された」