美しい海はどこまでも
…と、その時、チャイムが鳴った。……きっとこのまま授業を三人でサボるパターンになるんだろうな。
「一回、屋上に移動しよう?ここで長い時間話すよりも、屋上の方が先生にもバレなさそうだし?」
私の提案に頷いた二人は、とても不機嫌そうにしていた。二人の機嫌を直すのは、もしかしたら私の役目かもしれない……
と思っていたけど、二人の仲が深まるのに時間はかからなかった。
「え、屋上から見る海、めっちゃ綺麗だね!すごっ!ここ観光スポットにしても良いんじゃないかなっ?」
まるで子犬のようにはしゃぐ美記に、晴沢さんは呆気に取られていた。
「夏葉がここを気にいる理由、めっちゃ分かる!」
ずっと目をキラキラさせたままの美記は、いつのまにか忍ばせていたスマホで景色を写真に収めた。
「あの、夏葉さんってこの人と仲良いの?」
「え?あ、まぁ、そんなとこ?かな……」
仲良いかって聞かれると微妙だな。喧嘩するほど仲が良いとか言うけど、それって本当かな?
ま、仲が良いとか悪いとかどうでも良いけど。
「あの人、結構幼い感じがするね。俺、あんな感じの男子初めて見た。なんか、新鮮…」
「彼は佐藤美記って名前なの。同じ高一だよ。ちなみに私と同じクラスで、少し前に転校してきた」
「佐藤美記……なんか、本当に君たちって面白い人だね」
「…美記はバカなだけだよ。バカだから周りは面白いって思うのかもね」
私がそう言えば、晴沢さんは「ふふふふふ」と笑った。本当に、いつもツンツンオーラ出してるのが勿体無い。
このまま白馬に乗って欲しい。髪の毛を金髪に染めてもカッコ良さそうだな。
って思ってた私は、美記の声で現実に戻った。
「…ちょっと二人だけで盛り上がらないでよ。俺を置いていかないでよ」
わぁ、結構不機嫌な顔をしてる。でも、晴沢さんと並ぶと美記の方が身長低いから、不機嫌な顔も可愛く見えてくる。
「あ、それよりもさ、夏葉さん、俺のこと下の名前で呼んでくれないかな?」
「えっ?」
わざわざ私の耳の近くで言わなくても良かったんじゃないかな……美記の顔が怖い。
晴沢さんの下の名前で言えば、とりあえずこの距離からは逃れられるよね…
「海、不用意に私に近づかないで…ほら、美記の顔が怖いから」
「ふふ、本当だ。佐藤サンの顔怖いね」
「ねぇ、二人とも、声聞こえてるよ?…誰が俺の顔が怖いって?てか、夏葉とだけあんたのドス黒いオーラがマイルドになるの、妬けるんですけどぉ」