美しい海はどこまでも
「俺はお勧めしないな。何ならバスケに来いよ。海、運動神経は良さそうだからスタメンの未来も全然あるよ?」
「……でも、女子とか試合を観に行ってそうなんだよなぁ。俺、しばらく夏葉さん以外の女子に会いたくない」
あのぉ、一応写真部にも女子はいるんですけど?
そりゃあ、かっこいい男子を見るために試合を観戦するような女子はいないけど。
「海、それって、ぶっちゃけ夏葉と一緒にいたいだけじゃない?」
「そうだよ?でも、本当に女子は苦手なんだ。写真部の方がよっぽどマシ。バスケの先輩でイケメンの人何人もいるでしょ?女子のキャーキャー声とか聞きたくないから」
白王子の海は、重度の女子嫌いだった。いつもは紳士なのに、女子が絡むと言葉遣いが少しキツくなる。
それ以外は本当に王子様なんだけどなぁ。……美記は良くて俳優かな。バカっぽさがなければ王子級だと思う。
まぁ、そう言う感じで海は写真部に入ることになった。
教室に行かない海からしてみれば、これは大きな一歩だ。
ちなみに、海は私たちの前以外ではいつもの不良キャラを作る。徹底する女子避けに、思わず私と美記は笑ってしまった。
「高校一年、晴沢海です…コミュニケーションは苦手ですが、頑張ります」
相変わらずのツンツンオーラに、先輩も少し関わりにくそうだった。
「自己紹介から不良オーラが爆発してたよ。これは写真の腕でみんなを見返さないとだね」
「あっそ。写真って想い込めて撮ればいいやつ撮れる?」
「うん。どういう気持ちで撮るか、アングルがどこからかで写真のイメージは全然違うんだ」
「ん」
ははは、やばい。いつもの白王子からの変化に、私は笑いそうだった。とにかくギャップが凄い。
先輩に「何か試しに写真を撮ってみて」と言われたときも、「ハーイ」と棒読みで答えていた。
あからさまに先輩が顔を顰めていたけど、それは海にはそうでも良さそうだった。
女子の先輩や一年の子なんて、ずっと怯えているような様子をしている。…とても関わりたくなさそう。
……ただ、海の試し撮りの写真を見たみんなは、目を見開いて写真と彼を見比べた。
私はもう本来の彼の姿、白王子の海を知っているからそこまで驚かなかったけど、なかなかやるじゃんか。
誰も褒める言葉を口にしなかったから、私が代わりに褒める。