美しい海はどこまでも


うーん。顔が良ければ全てよし、とでも言うのだろうか。絶対にそれはあり得ないと思う。

性格も結構大事だ。どれだけ自分のことを知ってもらえるか、愛してもらえるかが大切なポイント。

…あくまでも、これは私個人の考えなんだけど。

そのままお昼も終わり、あっという間に時が過ぎ、気づいたら帰る時間になっていた。

「ごめん、私は今日は一緒に帰れない。夏葉、また明日ね!」

「うん。またね!」

久しぶりに一人で帰るのか。たまにはこういう時間も良いな。だって、一人でのんびり出来るから。


……と思ってたのに!全くもう!何でこうなるのかな?!

「ちょうど俺も一人だったんだ。そりゃそうだよね。他の人には帰る人が既に居るんだもん」

「で、でもどうして私?」

「うーん。最初に仲良くなった子だからかな?俺でもよく分かんないや」

なんて、ニカって笑う彼はどこからどう見ても王子様だろう。

ため息を吐きそうになったけど、ここは我慢。誰かに見られても、たまたまって言ってればきっと大丈夫。

「この高校って、結構不思議な人たちが集まってるよね?何となく噂で聞いてたんだけど、個性が強めな感じする」

「え?そう?私にとってはこれが普通なんだけどな」

個性に集まり、かぁ。そこまででもないような気がするんだけど?

「あれ、佐藤さんってどこから来たんだっけ?」

「隣町のこっち寄りのとこかな。あっちはさ、ここみたいに俺に対して騒がれなかったよ。他人に無関心って感じ」

「…それって、ただただ冷たい人の集まりってことじゃない?多分、私たちの高校の方が普通だよ」

「あ、そういう風にも考えれるね!確かに。こんなに和気あいあいとしてなかったわ」

ここは苦笑いで済ます。結構ハイテンションなお方だな。でも、意外と喋りやすいけど。

…普通って何だろう?さっきから私は普通、って言ってるけど、それは何に対して普通なのだろう。

考えたって無駄かな。それより、この人を何とかしなければ。

流石に家まで着いてこられても嫌だし、お互いに気を使うのはよくない。

うん、そう思うことにする。

「あの、佐藤さんの家はどの辺にあるの?」

「うーん。この道をしばらく真っ直ぐ歩いて、地味に急な坂を登って少し歩いたところかな」

げ、結構私の家と近いかも。道もしばらく一緒っぽい。…ほんと、ついてないな私って。

「夏葉さんは?どの辺にあるの?家」

「私も佐藤さんとほとんど同じ道を歩いて行って、一本細い道があるんだけどその辺かな」

「じゃあ、意外と近いんだね。俺たちの家って。まぁ、俺は引っ越してきた分際だけど」

さっき、私のことを夏葉さんって言ったよね?いきなり下の名前で呼ぶとか、意外とタラシだったりして。

てか、もう私の名前を覚えてくれたのかな?三十五人くらい、同じクラスに人がいるのに?

少しだけ嬉しいな、って思ってしまった。いけないいけない。これ以上女子の目線を鋭いものにしたくないし。



結局、私の家まで送ってもらってしまった。彼の方がやや遠いそうだ。

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