美しい海はどこまでも






 それから、それぞれ家で練習を重ねていった。台本も覚えていかないとだし、今は小説や写真どころじゃない。

二週間に一回のペースでしばらくは練習するそうだから、私たちは主演の役者さんに置いていかれないように必死だ。




 そして初合わせから今日でちょうど二週間。

今回はみんなの予定が十分に確保できたらしいので、ある程度通すみたいだ。

初めはアンがケンに恋をした場面から始まる。相変わらず上手な演技に、私たちは言葉を失っていた。

そして、次は私の出番。アンの前の席にいる私、リナが彼女に話しかけて友達になる。

お次は海の出番だ。海が演じるダイキもケンと仲がいい設定になっている。

そんな中で、私と海が先に恋人になるんだけど……

「俺、ケンと小学校からの幼馴染でさぁ。結構仲がいいと思うんだ。俺、あの時の自分の判断を褒めたい!だって、リナとの接点がたくさん出来たんだもん。…好きだよ、リナ。俺と付き合ってくれないか?」

「うん。私で良いのなら、こちらこそよろしくお願いしますっ」

……待って待って、海もこんなに演技が上手なんて聞いてない!不良でも白王子でもないキャラが新鮮すぎる。

しかも全くの違和感がない!何これ何これ?!この現場、ちょっとおかしくないですかぁ?

私の居場所が……どんどん無くなっていく。私のこのレベル、結構恥ずかしいんだけどっ。

役者経験ありでこんなんとか、またあの時みたいになっちゃう……

「ヤッホー♪みんな今日もカワイイね?そんなに見つめちゃって、俺、もしかしてブスい?…っはは、今日もかっこいいだって?ありがと!あ、でもずっとここに列ができてると通る人に迷惑だから、もっと端っこに寄るか教室にいてね?お、早速行動に移してくれてるの?助かる。んじゃ、まったね〜」

「あの王子様って言われている人、私は好きじゃないなぁ。アンを狙ってる気がする。絶対に気をつけてね?」

「ふふ、リナ、ありがとう。でも、私の中には…け、ケンしかいないから……」

あぁ、なんか虚しくなってきた。私、あの頃は確かな目標を持っていて、もっと情熱があったはず。

だけど、今はなんのために演技しているのか分からなくなってきた。楽しさも、プレッシャーには勝てていない。

いつも私はみんなに置いていかれるんだ。昔も、今も、それは変わっていなさそう……

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