美しい海はどこまでも
どう言う関係と言われても、友達?でもない気がするし、かと言ってただのクラスメイトでもない。
彼氏なんて全然違う名前だ。でも、確かに、私たちの関係ってなんなんだろう?
「俺と夏葉は、実は昔からの知り合いで最近再開した仲間だよ」
「え、佐藤さんと夏葉さんって昔からの知り合いだったの?あれ、だけど仲間って、なんの仲間?」
いやいやいやいや、待ってくれない?いつ私と美記が昔からの知り合いになったの?
「仲間っていうのはね、今みたいな感じだよ。役者仲間!子供の頃、少しだけ役者をしてたことがあるんだ」
「え、そうなの?!だから二人とも演技が上手だったんだ!」
「海は正真正銘の初心者でしょ?俺ら経験者なのに、初めてでこの海の演技はすごいと思うよ」
う、そでしょ?私、美記に役者経験があったことがバレていたなんて……
しかも、美記も役者だった頃があったんだ……全然知らなかった。
「ははははは、夏葉、凄い顔してる。驚きと少しの悲しみの気持ちが混ざってるって感じだよね?そりゃそうか。夏葉、必死に小役時代のこと隠していたもんね」
「な、なんで知ってるの?私、誰にも言ってない…」
「あー、覚えていないかもしれないけどさ、俺も夏葉と同じ事務所に居たんだ。しかも、結構一緒に練習してたんだよ?雑談もたくさんしたし、お互いにアドバイスをし合ったこともある」
「えっ!そうなの?ごめん、全然覚えてない……」
「良いよ。俺、佐藤美記で活動してなかったから。あの頃の俺は栢山ミキで活動してたんだ」
栢山…あ、もしかしてお母さんが天才子役からそのまま天才と言われ続けた最強女優の栢山玲華の子供?
「思い出した!いつもお母さんに憧れてるんだ、って話してた栢山くん!それ、美記だったんだね!」
「栢山って言われたらあの女優の玲華さんしか出てこない。…え、佐藤さんって玲華さんの息子?!」
あ、海もいるんだった。って、本当にごめん。ついつい話に夢中で忘れかけてたよ。
いやぁ、それにしても、苗字変わって雰囲気も違ったら気づかないって……
昔はあんなに人見知りで、ぶっきらぼうな感じだったのに、今ではこんなに穏やかな印象だ。
演技力も全然衰えていない。さすが、たくさん努力してきた甲斐があるね。