美しい海はどこまでも
始まりの波


 それはそれは翌日のこと。


「ねぇねぇねぇっ、夏葉が昨日、あの佐藤さんと一緒に帰ったって本当?!」

うわぁ、もうそんな噂が広まってしまったのか。恐ろしいな。

しょうがないけど、やっぱ、なんか噂されるのってやだなぁ。特に女子からって。

「何で何で?もしかして知り合い?それとも、一目惚れ的なやつ?」

「んなわけないじゃん。知り合いでもないし、一目惚れでもない!たまたま家の方向が一緒だったってだけだよ」

「そっかぁ、それはそれでちょっとガッカリ。朝は会わなかったの?」

「朝は会わなかったよ。…佐藤さん、起きるの苦手なんじゃない?」

ありえるなぁ、あの人なら。意外と抜けてる感があるもんなぁ。

「…何?俺の話?何が苦手だって?」

「……っ!」

「ありゃ、夏葉の未来の彼氏かな?」

はぁ、もう本当に朝から疲れるって!二人ともからかいすぎだって!

「ごめんごめん。何でもない。ただ、佐藤さんって朝弱いのかな?って思っただけだから」

「え、夏葉さん正解!…なんて嘘ー。俺はちゃんと朝起きれます。妹を起こしてたんだ。小学校に間に合わなくなるからね」

「え、佐藤さんに妹がいたなんて初めて聞いた」

それは私も同感。初耳だったなぁ。まさか、妹さんがいたなんてねぇ。結構意外だった。

「そんな二人に兄弟はいるの?」

「私はねぇ、一人っ子なんだなー♪前は兄弟が欲しいって思ってたけど、今は一人の方が楽かなって思ってる」

「へぇ、倉木さんは一人っ子なんだ。それこそ、弟とか妹とか、年下の子がいるイメージだった」

…兄弟関係は私も初めて知ったかも。なんか悔しいな。佐藤さんに先を越された感が半端ない。

でも彼の言う通り、愛美は人懐っこいところがあるから年下の子がいるってイメージに共感できる。

「夏葉さんは?兄弟いる?」

「私は三人兄弟で、姉と弟がいるんだ。お姉ちゃんは私の九つ上で、弟は中学生」

姉は今、立派な大人で弟は絶賛反抗期中。同じ家に住んでるから、いつもうるさいくらい賑やかだ。

「あー、でもわかるかも。夏葉さんって兄弟はいそうだし、真ん中っていうのも納得できる」

「うんうん。私、初めて聞いたけど、兄弟はいるものだってずっと思ってた!」

なんか、少し恥ずかしいな。家族のこと話したの初めてだし、私が真ん中だってことが知られちゃった。

…絶対、幼いとか思われちゃってる感じだよ。弟いるのに。
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