美しい海はどこまでも
「こんな感じかな。ヘヘッ、泣く演技ってやっぱ少し照れくさいね。海が別の撮影があって良かった。見られずに済んだ」
「もう、美記はベテラン俳優にも劣らないね。世界で一番演技が上手だと思う」
「俺にとっては夏葉だけだよ。他の役者なんて知らないし知りたくもない。ずっと俺は夏葉がす……夏葉のファ、ファンだから!」
?何を言いかけて言い直したのだろう。まぁ良いや。それにしても、これからどうするかなぁ。
練習を重ねるしか、努力するしか私には出来ない。舞台まであと一ヶ月ほどしかない。泣く演技で私は足を引っ張っている。
あ、役と同じ様な生活をしてみれば何かヒントがあるかも!
そうして役になりきった生活がスタートしたのだった。
「な、夏葉?なんかいつもと違う……」
「私と二人きりの時は、私のことミヤって呼んで欲しいな。これは役作りの一環なんだ。手伝ってくれる?」
「わ、分かった……」
うーん。流石に学校ではやらない方が良かったかもしれない。クラスメイトの視線が痛い。
美記には事情を伝えてあるから、美記もヒーローであるヒロを演じてくれている。
たまにはアドバイスなんかも貰ったり、良かったところは褒めあったりしていた。
「な…えーと、ミヤ、一緒にお昼食べよ?」
「うん。分かった」
生きる希望がないヒロインは口数は少なめだ。それに、少し冷めた印象もある。
愛美には役作りだと伝えたとはいえ、流石に少し申し訳なくなった。
「なぁなぁ、あの二人なんなん?性格が結構変わったし、最近一緒にいる回数が増えたよな?」
「それな。愛美さん可哀想。道琉、なんか夏葉さんの言ってやれよ」
「でも、愛美は意外と笑ってる。きっと二人には何かしらの理由があって、あんな感じになってるだけだ。愛美がなんとも思ってないなら俺は何もしない」
ハ、ハハハハハ。……コソコソと色々言われてるなぁ。しょうがないけど、誤解はされたくない。
かと言って役作りだと言うのもめんどくさそう。
そう思っていたのは美記も同じだったみたいだ。
「役者は役者でめんどくさいね。今日は海が撮影で学校にいないし、夏葉がいなかったら俺ぼっちだし?」
「……ヒロ、素に戻ってるよ。私も似たこと考えてたけど」
「あ、ごめんごめん。すっかり忘れてたよ。僕と美記のキャラがあんまり変わらないから、気を抜くとすぐ……」