美しい海はどこまでも
そして、ここからが一つ目の見せ場だ。
「どこまで行っても、私は…お姉ちゃんのところへ行けないのっ。私が死ねばよかったのに、守ってくれたから生きなくちゃいけない。だけど、私にはそれが、苦痛でしかないのっ!」
私なんかが生きてても意味なんかない。誰も得をしない。私は一体なんのために生きてるの?
一人の命を犠牲にしてまで生きている私って、何様?生きてても悲しいことばかりだ。
そう思うミヤに降ってくる、ヒロの優しい声。
「例え今が苦しくても、無理に生きろとは誰も言えない。ただ、僕は生きて欲しいって思ってるよ」
「っ、なんでそんなこと、言ってくれるの?わ、私、どうすれば良いのか…分かんないっ」
うん。上手くいったんじゃないかな。今もちゃんと、目から涙が静かに流れている。
「どうもしなくていいよ。ミヤが生きてて少しでも笑ってくれたらそれだけで良いよ。笑ってるミヤが好きだから」
はは、サラッと好きって言ってくれちゃって。ミヤは気にしない性格だけど。
やけに感情が乗ってるじゃん。
原作よりもずっとずっと優しい笑顔で、もはや美記そのままで言われたら私も意識しちゃいそうになる。
だけど、それくらいの方がリアリティはある。
「ヒロ、ありがとう」
涙が引き、春の木洩れ陽の様な微笑みが浮かぶ私。ここで一つ目の波は乗り越えた。
やっぱ役になりきるのって、楽しいな。
「はは、君は分かってないなぁ。僕はなんの取り柄もない人間だよ」
「運動神経は確かに才能もあるかもしれないけどさ、少なくとも勉強は自分の努力だよ」
「ははははは、えー何それ!初めて聞いたな。僕は流行りに興味なくて、服装はいつも半袖にジーンズの組み合わせだよ。似合ってそう?いや、ダサいと思うよ」
ヒロにはたくさんの友達がいる。男子なんてほとんど全員だし、女子も半分以上と仲がいい。
あの会話から、ミヤは少しずつ確かにヒロのことを好きになっていっている。
そんな中で他の女子とつるんでいる彼をみて、ミヤは嫉妬する。
それは恋愛目線でもあるし、友達多いのって良いなぁと言う羨ましさでもある。
「あ、ミヤ!今日委員会活動しなくても良いんだって。なんか少し寂しいね」
「……そうなんだ。早く帰れるんだね」
若干突き放す様な冷たさを含む声で、ぶっきらぼうに話すミヤ。