美しい海はどこまでも
ここからが二つ目の見せ場。
ミヤの嫉妬を怒らせたと勘違いするヒロは、ゆっくりと地雷を踏んでしまう。
「ねぇ、わざと?てか、なんでついてきてるの?帰る約束はしてないよね?」
「え、そうだけど…でも、僕はミヤの気持ちが知りたくて……」
「私は今のヒロの気持ちわかるよ。どうせ、何コイツめんどくさって馬鹿にしてるんでしょ?他の女の子とイチャイチャしたいんでしょ?」
本心とは違う言葉ばかり出てしまうミヤ。突き放すのは自分なのに、いざ離れてしまうのかと考えると寂しくなる私。
自分自身のことが嫌になる。
「はぁ……あのさ、何でそうなるのかな。全然違うよ。…僕は、他の女の子に興味なんてない。何なら名前も苗字しか覚えてないよ。普段彼女達のこと呼ぶ時は君、だし」
「はは、そうだとしても私のことはめんどくさい女、なんでしょ?良いよそれでも。心の中に土足で入られた気分がして嫌なんだけど」
「それはごめん。だけど、僕はミヤのことめんどくさいって思ってないよ。それどころか、知りたくてしょうがない。……まぁ、それがミヤに嫌な思いさせちゃったわけだけど……」
自嘲気味だった私は、ヒロの知りたい、と言う言葉に耳を疑う。
「こんな流れの中で言うのは間違ってると思うけど、僕はミヤのことが好きだ。ミステリアスなところも、笑うと可愛いところも、結構仲間思いで優しいところも、全部好きだ。返事は今じゃなくていいから、付き合うこと考えてくれないかな?」
好きって言ってくれた。これ以上嬉しいことはない。そんなミヤに選択肢なんて一つしかない。
それに、私だって選択肢は同じだ。
「わ、私もヒロのこと好きです。その、よろしくお願いします」
「やった。僕、めっちゃ嬉しいよ」
キラキラオーラ全開のヒロを直視できないミヤは超絶に照れている。私(夏葉)も照れている。
例え美記が私に向かって言ってくれた言葉じゃないとしても、私はミヤと同じ気持ちではある。
「ちなみにさ、何で不機嫌だったのか教えてくれる?嫌なら良いよ」
「……世間で言う…嫉妬、みたいな…やつ」
言い方も可愛くはないはずなのに、彼はどこか嬉しそうに「そうだったんだね」と言う。
……今、絶対に頬が赤い。ヒロと美記は話し方もオーラも違うはずなのに、なぜか重なって見えてしまう。