美しい海はどこまでも



弱い私たちは意味を見つけないとこの足でなかなか踏みとどまれない。

ただ大好きな人に認めて貰えるだけで、生きていける勇気になることがある。

「あーもう。みんなの前でこんなに泣かないでよ。可愛いこと言わないでよ」

別に可愛いことは言ってないんだけどなぁ。でも、今こうやって私を抱きしめてくれる彼は温かい。

私を元気にさせてくれるんだ。





「今日で付き合い始めてから一ヶ月だね!早いなぁ。夏休みの一ヶ月なんて亀よりも遅かったのに」

「今日まで色々とありがとね?家族のこと相談に乗ってもらったり、みんなから私を守ってくれたり」

「当たり前だよそれくらい。それが彼氏の役目だよ」

「ねぇ、今からどこにいくんだっけ?」

「…それ、わざと?……僕たちが出会ったあの曲がり角だよ」

あそこでぶつかる人は少なくないらしく、あそこをきっかけに私たちのような出会いがある人たちも中にはいる。

だけど、私たちには負けるかな。って、何恥ずかしいこと考えてたんだ私!

「懐かしいね。ここでよく漫画にある様な出会いをしたんだよね、僕たちは」

「ヒロには貰ってばかりだったなぁ。これからは私も、ヒロに何かあげれる様になりたいな」

「それって、これからも僕と一緒にいたいってことだよね?」

「もう、ヒロのバカっ」

かけがえのないものは、何も目に見えるものだけじゃない。

繋がっている糸もかけがえのないものだけど、それは運命って呼ぶんだ。

私たちにとってかけがえのないもの、それは、今だ。

「お姉ちゃん。私ね、お姉ちゃんのおかげで大切な人に出会うことができたよ。今思えばさ、これってお姉ちゃんが憧れていた展開だよね。見ててくれてるの?」

「僕はミヤを、世界一幸せにして見せます!だから、ミヤ、これ受け取ってくれないかな?花言葉は自分で調べてみてよ」

そう言ってヒロが差し出したのは、ポインセチアとスターチスの花束だった。

……調べなくても知ってるよ。

「幸運を祈る、変わらない愛、でしょ?…っヒロらしいや……」

「はは、泣かなくても。ミヤは泣き虫だね?」

「うるさいっ。…でも、これだけは言える。……私もヒロと、一緒に世界一幸せになりたいっ!」

そうして二人がキスをして幕を閉じる。

……本当ならしたフリのはずだったのに……なぜか美記は軽くはあったけど唇をくっつけてきた。

客席には見えなかったとは思うけど、何もキスしなくても良かったじゃん!

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