美しい海はどこまでも


 幕が閉じた後のステージ上では、私は一人あたふたしていた。

その後、楽屋に戻ると美記が突然笑い出した。

「っぷっあっはははははは!もしかして照れてる?やばい、可愛すぎる。夏葉、いつそんな表情を覚えてきたの?」

「わ、笑い事じゃない!だって打ち合わせはフリだったのに、本当にしちゃうんだもん!」

「俺、さっきのがファーストキスだったんだ♪」

「それは私もだよ!今日の演技気合い入ってたね?それゆえにキスまでしちゃってさ?」

演技が上手だったことは素直に認める。だけど、キスはやりすぎじゃないかなぁ?

「まぁ、ヒロの気持ちに共感しかなかったからね。それにしても夏葉可愛かったよ。俺、超楽しかった!また夏葉と一緒に演技したい!」

「私はもう懲り懲りかも〜」

「ははは、今回は舞台だからまだまだ何回も演技しないとだよ?一緒に頑張ろうね!」

私は懲り懲りって言ったけど、正直楽しかった。世界観に浸っている時間が幸せなんだ。

それに、ヒロを美記が演じてくれたのも大きい。相手が美記だからこそ、安心して演技が出来たと思う。

絶対に本人に言ってあげないけどね。





 その後の公演も次々と成功させ、ついに最終公演をも終わりを迎えた。

毎回何回言ってもキスしてくる美記に、私は毎回何回もドキドキしている。

それも今日で終わりなんだと思うと、少し寂しくなって……って違う違う!

これは美記との絡み合いが減るから寂しいのであって、キスに対してじゃない。…そう思いたい。

……絡み合いにしても寂しいのなら、そろそろ認めないといけないのかな。見て見ぬ振りはもう出来なさそうだ。

あーあ。そうなったらどうすれば良いのだろう?美記には初恋の子がいるのに、この恋は叶わないじゃんか。

「幸運を祈る、変わらない愛…でしょ?…ヒロらしいやっ……」

「はは、泣かなくても…ミヤは泣き虫だね?」

「うるさいっ。…でも、これだけは言える。……私もヒロと、一緒に世界一幸せに、なりたいっ!」

きっとミヤも似た様な気持ちなんだろうな。今なら今までよりもこの時のミヤの気持ちを理解できる。

あ、やばい。涙の量を間違えた……セリフの声が震えちゃったし、ここはもう少し微笑まないといけない場面なのに……

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