美しい海はどこまでも
うーん……まだかなぁ。ちなみに今の時刻は午前六時五十五分。
私は四十分に家を出て、近くの公園で美記を待ち伏せしていた。……流石に早すぎたかもしれない。
役者を始めてから気がつけば季節は秋本番で、やや肌寒い空気が私を包み込んでいる。
学校の予鈴は午前八時だから、美記は少なくとも七時三十五分までにこの通りに姿を現すはず。
じゃなかったら遅刻確定だ。でも、朝練があるって海は言っていたから美記がいつ来るのかが分からない。
「早めに家を出たのは良いけど、やっぱさっむい!風邪引きそう……」
そんな私の独り言は乾いた空気に消えていった……はずだった。
「…誰かと思えば夏葉?……そんなところで何してるの?…風邪引くよ?」
驚いたのも束の間、時刻を確認すれば午前七時五分。…ついにお待ちかねの彼が姿を現した。
やっぱ気まずくて、やや伏せがちで私は言葉を発した。
「あのさ、……自分勝手に避けて美記のこと傷つけてごめん。私、自分のことしか考えていなかった。最低だね、私」
「…俺が何かしたのかは分からないけど、傷ついたのも本当だけど、別に夏葉のこと責めてないよ。それに、俺はそんなことで夏葉のこと嫌いになんてならないから。……傷ついたけどね?でも、謝るためにわざわざ待っててくれたってこと?」
「まぁ、そうなりますね……自分自身が自分の気持ちに振り回されてました。本当にごめん」
「あははははは、敬語似合わな過ぎ!はは、俺、久しぶりに夏葉と話せてめっちゃ嬉しい!」
気まずさのあまり、ついつい敬語になってしまった私を笑ってきた美記は、すっかり元気な様子。
あーもう、調子が狂わされるな。折角いい感じに仲直りできると思ったのに、こういうところがまだまだ不満だ。
でも、私が避けてしまった分は美記に優しく接してあげようよ思う。
それに、別に喧嘩したいわけじゃないし、笑っている美記の方が好きだし……って私のバカ!
「前も気まずくなった時あったじゃん?その時も理由が夏葉の気持ち、だったよね?それってどんな気持ちの問題なの?」
こ、ここにきてこの質問ですか?い、言えるわけない!好きだって気持ち、すでに好きな子がいる美記に言えないよっ。