美しい海はどこまでも
あれれ?私はいつ美記の彼女になったのかなぁ。
「…お、おはよう。え、なんで?霜島さんって美記くんと付き合ってたの?!」
え、ちょっと待ってこの人誰?なんで私の名前を知ってるんですか?
雰囲気からきっと先輩なんだろうなとは思うけど、この人知らない。私とは会ってすらいないはずなのに。
…自慢はできないけど、私は一度見た人の顔はだいたい覚えている。忘れていてももう一度会いさえすれば思い出せる。
「エヘヘヘヘ、そうなんです。今日から付き合い始めました!朝、いい感じのタイミングがありまして、その時に」
「うわぁお!美記くんってクレイジーだね!しかもこんな可愛らしい子を捕まえるなんてね。それにしても、君の初恋の子がまさかこの子だったとは驚きだよ!はっはっはっはっは」
……なんか、すごくパワーと元気がある人だな。笑い方も豪快だ。
って、今この人何て言いました?!
「もう、部長ったら口が軽くて大きいデスネー。俺の彼女がびっくりしてしまったじゃないデスカー」
ハ、ハハハハハ……美記、顔は笑っているけど目が、目が笑っていない。
何より語尾が棒読みになっている。
って!それよりも!
「美記…初恋の子が私って、本当?」
「あー、その話は後にしていい?今から夏葉に頼みたいことがあるんだ」
「おーおー、すまなかったな美記くん!と彼女さん!そしてなんとも甘酸っぱい関係だねー」
……この部長?さん、私苦手かもしれない。そもそも空気読めないのかな?
周りの部員さんも苦笑いしていらっしゃる。もう、この人は無視だ無視!
「…で、頼みたいことって?」
「へへ、今から俺と試合してくれない?今からここにいるメンツで二つのチーム作るから、俺がいない方のチームに入って試合してほしい」
美記に頼みたいことが何かを聞いた時から、彼はずっと意地悪そうにニヤニヤしている。
しかも私をここまで連れてくる前に「バスケやらなくてもいい」って言ってたくせに試合してって言ってくる。
……私の返事なんて一つに決まっているかのように、美記は二つにチームを分けた。
なぜか部長は補欠にいたけれど。