美しい海はどこまでも
「重大なお知らせがあります。あなたたち三人には大きな仕事が舞い込んで来ました。……同じ映画の主演を三人にやっていただきたいのです」
「え、でも、このお仕事の連絡は急ぎじゃなくても良かったんじゃないですか?俺ら、今学校にいるんです。普段は気にかけてくれているんですけど……」
美記の言う通り。学校から帰った後でも連絡はできる内容ではある。
「いえ。ここで一番重要なのは、霜島さんです。この映画は霜島さんがキーポイントなんです。…霜島さん、今から事務所まで来ていただけないでしょうか。学校側には話はつけますから」
私がキーポイント?いわゆるヒロインだとかなんとか?いや、それだとわざわざ呼び出さないよね…
「分かりました。今からそちらへ向かいます。…私一人で、ですよね?」
「はい。ということで、佐藤サンと晴沢サンは霜島さんの学習面のサポート等をよろしくお願いします。では、校門まで車を走らせますから、霜島さんはそこにいてください」
そのまま向こうに電話を切られた。
なんだなんだ。何が起きているの……私だけに大切な用事があるって、私が何かやらかしたことでもあるのだろうか。
「私行ってくるね。二人はなんかよろしく!」
「なんかって何?はは、行ってらっしゃい!」「気をつけてね!」
温かい言葉に背中を押され、私は校門まで歩いた。すでに車は到着しており、スタッフさんに促されるまま車に乗り込む。
……車内には知らない中年男性とやや若そうで気の強そうな女性がいた。
そんな気の強そうな女性は私を見てこう言った。
「あなたの書いた小説が公開される前に映画化されることになりました」
あまりにも突然のことに、私の思考回路は停止する。
え、待って?まだ公開もしていないし出版の相談などは一切相談していない。
それなのに、なぜ私の完成したばかりの小説が映画化されるんだろう。
「うふふ、よく分からないって顔してるわね。詳細は事務所についてからにしましょう?」
謎の独特なオーラを放つこの女性とは反対で、もう一人の中年男性と思われる人はザ•陰キャと言う感じだ。
不思議な人だなぁ、と思っていたけれど、ある事実を知って私は頭を下げることになる。