美しい海はどこまでも
そして文化祭が来月末くらいにある。
もっと言えば、文化祭の二週間後には遠足があるし、遠足の三週間後にはテストも控えている。
今は九月三日。脚本が終わるのは十月入るか入らないかだろう。
体育祭期間を跨ぎ、文化祭期間は練習と被る。こんなに忙しいことはこれから滅多にないだろう。
本の出版の話もあるし、私は大忙しだ。
「もう、決まってしまったことですので変えることはできませんが、ぼ、僕なりにサポートできればなと…」
「ごめん。サポートはいらない。あなたはいつも通りの仕事で充分だと思うよ?良い話はもらえたから百歩譲って許す」
「あ、ありがとうございます。じゃ、僕はこれで……」
うんうん。忙しいほど人は頑張れる、だよね!がんばれ私!
と意気込んだそのとき、事務所の扉が勢いよく開く音が聞こえた。
「はぁ、はぁ、夏葉っ!!っ、体育祭の話が今日あったんだけど、はぁ、夏葉が女子のリレーのアンカーをすることになったよ!それと、俺ら三人で何か演技しないかって話があった!」
息を切らしてまで走ってきてくれた美記からは、さらにとんでもないワードが出てきた。
アンカーは全然良い。むしろやりたかったくらいだ。だけど、三人で何か演技をしろって?
これ以上私を苦しめないでくれるかなぁ?夜寝る睡眠時間がどんどん減っていく気がして一人ため息をつく。
「はぁはぁはぁ、夏葉さん、その反応だと、はぁ、忙しくなったとか?はぁ」
「うん。そうなんだよね。忙しすぎて体調崩す可能性だってあるくらいだよ」
せめてタイミングさえもう少しなんとかなっていたら、ここまで忙しくはなかったかもしれない。
てか、海は人の心を読む力でもあるのかな。
「それじゃ、体育祭の演技は出来ないってことかな?俺はそれでも良いよ。海はいじめた奴を見返したいとは言ってたけど、基本はどっちでも良いらしいし?夏葉の判断に任せるよ」
でも、海はいじめた奴を見返したいんだよね?
美記も演技上手だし、海みたいな発想ならば近寄ってきた女子を見返したいって思っていてもおかしくはない。