美しい海はどこまでも






 やっちゃったな。あーあ、みんなに迷惑をかけてしまった。

ピピピッと体温計の音に合わせて、表示されている数字を確認してみれば三十八点九だった。

「…今日は学校休むしかないや。朝二時くらいまで作業していたせいかも」

体育祭から二日後、スタッフから書籍化するにあたって修正したり表紙を考えたりしていこうと言われた。

早めに終わらせていた方が楽だろうと考えた私は、今日の朝に修正を終わらせた。

…それが原因だったんだろうなぁ。私が熱を出したことを、スマホでスタッフさんに連絡をする。

『学校には保護者様から連絡はされていますよね?分かりました。今日の撮影練習は霜島さん抜きで行うことにします。ですので、あなたはゆっくり休み、早く熱を下げてください。では』

通話が終わりスマホを近くの机に置くのと同時に、今度は台本を手に取った。

今日練習予定だったページを開き、頭の中で何度もシュミレーションを行う。

……ただ長くは続かず、気づけば私は意識を手放していた。





 ピーンポーンピンポーンとインターホンが鳴ったのを合図に、私は体を起こす。

時計を確認すればちょうどお昼時だった。テイクアウトでもしたのだろうか。

でも、お母さんは手料理がメインなはずだからテイクアウトはしないと思う。だったら配達員だろうか。

……これも家族はネット注文はしない主義だから考えにくい。

必死に誰が来たのかを推理していた時、お母さんが私を呼んだ。「体調悪くても一回出て来なさい」と。

「えっ!」

「あ、お邪魔してます〜。佐藤美記と言います〜。お久しぶりですね」

「晴沢海です〜。……お昼時にごめんね?」

あれ、今日は撮影の練習あるんじゃないの?しかも、私は自分の家の場所なんて誰にも教えていないのになんで知ってるの?

……あ、一度だけ美記は家の前までは来たことがあったっけ?綺麗な海の風景写真をもらった時。

え、その一回だけなのに家覚えていたってこと?

「ふはははは、夏葉、寝癖ついてる。かわい」

「本当だ。なかなか見れないレアな夏葉さんだ!写真撮っても良い?コンテストに出したい」

「ふふふ、夏葉ってこんなに良い人達がそばに居るのね?将来は安心だわ♪」

「…からかうのやめてくれない?しかも、お母さんは無駄なこと言わなくて良いから」

寝癖……確認してこなかった。何も気にしずにリビングまで来たら、そこには二人がいた。

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