美しい海はどこまでも
「やっぱそうだよな!だって、道琉、怖いくらいに分かりやすいもん。いやぁ、でも安心したわ」
「そうだよね〜。これで恋愛感情がなかったら怖いよ。一緒に二人のこと、応援しようね!」
私の言葉に、彼はなぜか少し不満そうな顔をした。
「安心って、そう言うことじゃないんだけどなぁ……夏葉、相変わらず鈍感だ」
彼がボソッと呟いた言葉は、私の耳には届かなかった。
「ねぇねぇ〜!夏葉って、昨日も佐藤さんと帰っていたんでしょう?」
うわ、もうそんな情報が?!女子の連絡網怖すぎ……逆に尊敬すらする。
そんな中、愛美はコソコソと私に教えてくれた。
「ここだけの話、夏葉は他の女子から結構妬まれてるよ」
「ハハハ、そうだと思った。だって、いつもよりも佐藤さんの周りの女子が多いもん。それに、視線がすごく痛い」
主に、ギャルとかギャルとかギャルとかギャルとか、一部に少しチャラいだけの女子。
そんな女子たちに囲まれた佐藤さんは、どこか顔を引きつっていて嫌そうだった。
……私には何も出来ないんだけど。
これ以上女子たちに嫌われることしたら、いつイジメられるのか分からない。
ギャルってやっぱ怖いな。私は一生、こんな女子にはなりたくない。
「ああいうの、夏葉はウザくないの?私、めっちゃムカつく!自分たちだけの男じゃないっての!」
「気持ちは受け取るよ。でも、手は出しちゃダメだよ?」
それからもしばらく、佐藤さんは女子に付きまとわれていたし、愛美もずっとイライラしてた。
愛美のイライラを抑えようと、私は昨日の帰りの話題を持ち出した。
「ねぇ、そういえば、昨日道琉とはどうだったの?」
「え、え、え、ど、どうって……何も、なかったよ?」
…あからさまに頬を赤くする愛美に、私は勘づいた。ふむふむ。なるへそなるへそ。
「良いことあったんだね!付き合ってはいないかもだけど、私はいつも応援してるからね!」
良いじゃん良いじゃん。順調そうで安心安心。もしも今度、佐藤さんと話す機会があったら伝えようかな。
って、今はそれどころじゃない!!しばらくは安静にしておかないと……
そんな時、佐藤さんが横目に私を見ているような気がした。
……いや、あくまで気がしただけだけど。
結局、横から感じる視線は授業中でも消えなかった。
そんなんだから私は、授業には全く集中できなかった。