美しい海はどこまでも
何で今、その話をするかなぁ。そんな真剣な顔しなくても良くない?
私に言うくらいなら、直接初恋の子に「好きです」って言っちゃえば良いじゃん。
「うん。呆れるくらい鈍感だよ。その子の目の前である人物がさ、お前の初恋の子ってこの子なんだ、的なことを言ってもそのことすら忘れているみたいだし?」
あれ……そういえば、バスケの試合に参加させてもらった時にそんな感じの話があったような?
もうすっかり覚えていないけど……
「…ねぇ、何で俺らが仲直りした日にバスケやろって言ったのかわかる?」
今振り返ってみれば、あの時急に体育館に連れてこられたんだ。
特に深く考えることなく試合しちゃったけど、何でだったんだろう。
「……俺らのチームが勝ったら、早いうちに初恋の子に告ろうって決めてたんだ」
「…でも、何で私まで試合をやらなくちゃいけなかったの?」
「はぁ……近くで俺のバスケを見て欲しかったんだよ。俺が好きな初恋の子は、夏葉なんだよ」
ため息を吐かれたと思ったら、信じられない言葉を耳にしてしまった。
「初恋の子が…私?」
「そうだよ。もちろん小さい頃の夏葉も好きだし、大きくなった夏葉も好き。離れてしまっていた時も、俺は一日も夏葉のこと忘れたことなんて無かったよ。中学も演劇部があったから入って、いつでも夏葉に見てもらえるようにって頑張ってたんだ」
ストレートに告白されて、もう私の脳内は爆発寸前だ。好き?私のことが?これは夢じゃなくて?
ほっぺたをつねってみれば、ちゃんと痛かったから夢ではなさそう。
「仕草や綺麗な性格、たまに少し不機嫌になるところや笑った時の顔、ひたすらに頑張るところや声も全部好き。大好き。愛おしくて毎日抱きしめていたい」
「ななな、何にも私に良いところなんて無いよ!」
「あるよ!自分に自信のないところは、小さい頃から変わったね。そういうところも好きだよ。でも、夏葉はこの世の誰にも負けないくらい素敵な女性だよ。…俺と付き合って欲しい」
私は自分のことが嫌いだ。年をとればとるほど、心が色を失って努力すら出来なくなっていく。
子役を辞めたのは、みんなからのプレッシャーだった。
「期待の卵」とか言われて、嬉しいよりもプレッシャーの方が大きかった。