美しい海はどこまでも
「っ何だ。夏葉も俺と同じだったんじゃん。……これからは正真正銘の恋人だね!」
あの日、美記が私のことを彼女って言った日から、私たちは特に噂されることもなかった。
バスケ部の人たちは広めないでくれていたらしい。
ずっと今まで続いていた曖昧な関係に、やっとで名前がついた。
友達でも、親友でも、役者仲間でもない特別な名前。
あぁ、なんか力が抜けてきた。涙で視界もぐちゃぐちゃだ。頭がボーとしてきてだんだん立っていられなくなってくる。
「え、待って大丈夫?ってアッツ!…部屋どこ?ベッドで横になりなよ」
体がふわっと軽くなったと思ったら、美記にお姫様抱っこされていた。
そのまま私を部屋まで送ってくれると、彼は私のおでこに冷えピタを貼った。
「…ありがとう」
「どういたしまして。ま、彼氏なら当たり前でしょ!ってことで、体お大事に!現場に戻るけどまたちょくちょくお見舞いに来るから。おやすみ。……ちゅっ」
「頑張ってね…て、キスしちゃダメだよ。…でもありがとう」
「ん」
今日はたくさんの人にたくさんのものを貰った日だな。
早く元気になりたいな……
あれから五日後の今日、やっとで熱が引き学校に登校出来る。
美記や海がお見舞いに来てくれたり家族が看病してくれたりしたおかげで、私は五日かかって元気になった。
……学校のみんなは知っているのかな。私と美記が付き合ってること。
「行ってきます」
久しぶりに外に出たら、あまりの眩しさに目を閉じてしまった。
部屋もカーテン閉め切ってたしなぁ。日光って部屋の電気の何倍も眩しいんだ。
……あれれ?……私が美記を待ち伏せしていた公園に、彼がいる。
目があったと思えば、私の彼氏は子犬のように尻尾をブンブンさせながら近づいてきた。
「おはよう!あぁ、愛しの俺の彼女!今日も可愛いね。体調大丈夫?」
「う、うん。もう熱は平熱だよ。…てか、ここで何してたの?」
さらっと可愛いなんて言ってくれちゃったことは置いといて、この公園で何をしていたのかに話題を変える。
「え?もちろん夏葉と一緒に登校するためだよ♪前にさ、俺のことを待っててくれたみたいに、今度は俺が夏葉を待っていようって思ったんだ」
あの日よりも今日の方が肌寒いのに、わざわざ私と等恋するためだけに待っててくれたんだ。
そう思うと、心がポカポカと温かくなる。