美しい海はどこまでも
初彼氏が美記で良かったと心の底から思う。小さい頃に出会ったのが美記で本当に良かった。
彼が転校してきた当初は正直、美記の印象はどちらかといえば悪い方だった。
だけど、気づけば隣にいてくれてすごく安心する自分がいる。美記の沼にハマっていく自分がいる。
「好きになるのに理由はいらない」
「え?ごめん。俺聞き取れなかった」
「…ねぇ、私、美記のことが好きだよ。理由なんて探しても探しても全部は見つからない。簡単な言葉でも言い表せない。こんな私が美記の隣にいても良いのかなって、まだ心の奥では思ってる。でもね、好きだよ」
「はは、何急に。照れるからやめて?…俺も好きだよ。一生隣にいるって神様に、夏葉に誓うよ」
大好きな人に、何度目かのキスをされた。
こんなに幸せになっても良いのかな。逃げてばかりの私が、美記の隣なんかに並べるのかな。
嬉しいことがあれば、頭の中で現実を突きつけて素直には喜ばない。
ずっとそれを繰り返していた。だけど、もう辞めよう。彼の隣でも胸を張って生きていけるように頑張ろう。
「ほら、行くよ?二人で遅刻したら勘付かれちゃう」
「別に、私は勘付かれても良いよ。ただ、遅刻はしたくないな」
「うん。じゃあ、一緒に走ろうか」
手を取って学校まで走り出す。まだまだ文化祭も映画の撮影もやらなくちゃいけない。
この先に何が起きるかなんて神様くらいしか分からない。
それでも、一人じゃないって事は心の支えになる。
まだまだ私たちは子供だ。だけど、確実に一日一日大人に向かって歩いている。
「あはははははっ!やばい。楽しすぎるってこれ!」
そうやって笑う美記は、やっぱりカッコよくて。
「これで遅刻したら美記のせいだからね?っぷっあはは!でも、どうでも良くなって来た」
「俺、絶対に夏葉を一人にしないから。俺の人生は夏葉中心に回っているからさ、夏葉がやりたいことに俺は付き合う!」
「私こそ、この人生は美記中心だよ。私の人生は、君に捧げるよ」
愛おしいこの日々がいつまでも続くと願って、私たちは今を生きていく。