美しい海はどこまでも
だから、何も悪くなんてないの、美記は…キミは。
「こら、そこ授業に集中!」
「あ、すんませーん」「ご、ごめんなさい」
ちなみに先生役はもちろん、担任の先生だ。
クラスの文化祭はステージ発表をすることになった。
気を遣わせてしまった感が半端ないけど、ここはご厚意に甘えさせてもらうことにする。
「ねぇ、キミ、今から俺らとつるまねぇ?あ、アイツが嫌なら俺とだけでも良いから。てか、俺がそうしたいからさ、俺と二人で色々な景色を見てみん?」
「景色…例えば、どんなものですか?」
「んー……分からん。キミとなら、どんな景色でも見れる気がするんだよね俺。なんてゆーの?感?こう、ビビって来たんだ。キミのその瞳を見てから」
確かに彼の行動は自由で、誰もが羨ましがるような運の強さも持っている。
そんな彼の言うことだから、きっと嘘なんかついていない。そもそも、彼が嘘をついているところを私は見た事がない。
もしかしたら嘘をつかないんじゃなくて、嘘をつけないのかもしれない。
そんなミステリアスな彼だからこそ、私は憧れ、惹かれ、好きになったんだ。
「私の瞳、そんなに希望でも満ち溢れてるんですか?いつも暗い私なんかと一緒にいたって、あなたには良いことなんてないですよ」
途中で「やっぱやめた」とか言って手放されるよりは、最初のうちに関わらないようにすれば良い。
後から期待して裏切られて、辛くなるのは私自身なんだから。自分の身は自分で守らなくちゃ。
「何でそうやって決めつけんの?俺が言うんだからもっと信用してよ。それに、そんな軽い気持ちで誘ってなんかない。もう、言っちゃうけど、俺はもっと前からキミが好きなんだ」
「……ん?」
「だーかーらー、俺はキミが好きで好きでたまんねぇの。あ、ちなみに、俺が妬きそうだから前髪は切らないでね?上げないでね?メガネもずっと付けてて?でも、俺の前では前髪を上げてメガネ外して欲しいな」
彼が、私なんかのことを、好き?どこのハッピーな物語だ。
こんな暗くて地味な私のことなんか、好いてくれる人なんていない。
しかも、よりにもよって私が好きな彼から。イケメンな彼から。