無個性

心の再開

「お世話になりました」
私は退部届を提出し、先輩や後輩に挨拶を済ませた。これから私は何をしようか。凛音と遊ぼうかな。小説ばかり書いているから、遊ぶ暇なんてなさそうなどと考えていると前から凛音がやってきた。
「ダンス部、やめたの?」
「うん」
「もったいないね」
「そうかな」
「次いつ書く?」
結局は小説を書くのか。それもありなのかもしれない。私はしぶしぶ了承の返事をし次書く日を決めた。

─数日後の日曜日。部活もなければバイトもない私にとってはもう日曜日は暇以外の何物でもない。小説を書くにはうってつけの日だった。いつも通りに集まった私たちはいつものようにそれぞれに小説を書き始めた。
今日書く小説は服が好きな女の子の話でも書いてみよう。
まずは主人公の設定や登場人物の設定。今回はあらかじめ、どういうポジションでどういう立ち回り方をするかざっと決めた中で後から話を肉付けしていくことにしてみた。ペンがなかなか進まない時は凛音の様子を見たり違う本を見たりしていた。
今回は一日じゃ完成しなかった。家に持ち込んで続きを書くことにした。嫌なことを忘れるにはちょうど良かった。勉強を片手間に小説を書くことにした。

そうして書いて完成に1週間かかった。
これは超大作じゃないかと自分で思うほどであった。
凛音に完成した小説を持って行った。それが月曜日の放課後である。そして凛音は次の日に感想を持ってきた。
「まだここの描写が甘い、視点が分かりずらい」
相変わらずのダメ出しだ。だけど前よりダメ出しが減ってきてるような。
「キャラが立ってて良い、設定も良い、ここの比喩表現は私も好き」
あれ、ほめられること多くなってきてないかな。気のせいだよね。でもほめられると嬉しい気持ちになる。
「そこは私もこだわった」
「うん、いいと思う」
私はここからなんとなく、小説を書くのが好きになった気がした。
書いていて楽しい感覚もあったし、こうして評価してくれる人もいて、最初はしぶしぶと言った感じだったがやはり面白い単純にそう思った。

だから私は小説を書きながら時が過ぎていった。勉強もそこそこにしながら小説だけは描き続けていった。そして私はいつの間にか読書と小説を書くことが趣味になっていった。
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