無個性

ありふれた人生

──時は過ぎ私たちの卒業の季節。

去年は何事もなく終わると思っていた。ダンスはやめたし、小説は書き始めるし、色々あった年だった。今日で私はこの学校を卒業するのだ。色々あったがこの学校には感謝している。それでいて今年も何も無く終わると思っていた。

私はあれからも小説を書き続けていた。今になってはダメ出しも無くなった。もしかしたらもう私は小説家になれるのかもしれないなどと期待をするが現実はそんなに甘くないだろう。だけどやってみたいと思ってしまった。なってみたいと思ってしまった。まだ誰にも言っていないが、凛音には相談しようと思っている。
一番に相談したいと思っている。凛音には本当に感謝している。私に趣味を与えてくれたし、それだけでなく夢も与えてくれたのだ。感謝してもしきれないだろう。
「凛音ちゃん」
「美咲か。卒業おめでとう」
「私ね、小説家になろうと思うの。なれるかな?」
凜音は言った。
「絶対なれるよ」
私がなれるだろうか。でもこう言ってくれているのだ。いつもハッキリ言ってくれている凜音が。信じてみてもいいのではないだろうか。
「なってみるよ。小説家」
普通の人生を送ると思っていたが私には夢ができた。凜音のおかげだ。彼女がいなければ私はこう思わなかっただろう。だから最後に感謝を伝えなければならない。
「あとね、ありがとう」
「いいんだよ」

───数年後。


「続いてのニュースです」

私はニュースに出ていた。作家の登竜門と言われる賞を取ったのだ。
「最後になにかどうぞ」
「友達のなれるを信じてここまでやってきました。今でも感謝しています。見てるかな。ありがとう」
どこかで見ていたらいいなと思いながらコメントに答える。
普通の人生なんてそんなものは誰にもないのかもしれない。
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