Only
そして。私は今、陽輔の家の中に居た。
懐かしさを感じる暇も、心の余裕も、なくて。
ただ、彼と離れたくなかった。
彼もきっと、同じように感じている。
それがわかると、更に彼を愛しく想った。
『無我夢中』。まさにそんな言葉がしっくりくるような状況で、
この上なく幸福を感じていたためなのか、
私は暫く遠くから自分と陽輔を眺めているような、そんな感覚だった。
身体の制御が自分の意思の元に戻った時、私はまだ陽輔の腕の中にいた。
陽輔のベッドの上、私を上から見下ろしている陽輔が近くにいることにホッとして泣きそうになった。
そんな私を、彼は決して見逃さない。
「・・・・・・恐いか?」
そんな言葉をかけてくれる彼に私は首を横に振って、自ら彼の唇に口づけた。
そして、私は幸せを訴えるかのように笑った。
それを見た彼が、同様に微笑んでくれたその顔は、今まで見たことがないくらい優しかった。