Only
そんな私達の関係に変化が起こるのは、それから更に半年程あと。




『えつ、俺今週の水曜日休みなんだ。どっかいかないか?』


晃太はよく、悦子さんのことを『えつ』と呼んでいた。呼ぶ声にはいつも、甘い響きが感じられた。


夕ご飯を三人で食べながら、晃太は悦子さんを誘っていたが、悦子さんは顔を曇らせた。

『えっ?晃太水曜日休みなの?急じゃない…。その日は、予定入れちゃったよ。』

『そうなのか?久しぶりに出かけようと思ったんだけど。……そうだ!明衣、俺とどこか行かないか?』

悦子さんの言葉に一瞬困った顔をした晃太が、すぐに私を見て、言った。

『……私?……でも、学校が。』

私は晃太の計らいで公立の高校に通わせてもらえていた。友達はなかなかできないけど、晃太にもっと自分を周りに出せと言われ、どうにか少しずつ話ができる人も増えてきていた。

『たまにはいいだろ!毎日行かなくても大丈夫だよ!!』

『そうね!いいかも。連れて行ってもらえばいいわ、明衣ちゃん。』

晃太とのお出かけは、全く嫌だとは思わなかった。

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