Only
「明衣。」
捜査を終えてから、家に帰った私の耳に響いたのは低いバリトン。
愛しいと思える声。
「陽輔?どうしたの、こんな時間に。連絡くれればよかったのに。」
「話があるんだ。どうしても、直接話したかったから。待つのは苦じゃない。平気だ。」
そういって薄く微笑んだ陽輔をみて、胸は高鳴る。
想いが通じ合ってから、彼はさほど多くはないものの、明らかに以前より微笑むことが増えた。
その笑顔に、私も安心した。
「とにかく、入って。お茶入れるから。」
陽輔に会えたことが嬉しくて、私は陽輔の『話がある』という言葉に深く注目できなかった。このときは。