Only
「もしも、武山岬という男を知っていたら、そいつには近寄るな。」
そう言われて、数秒間、私は固まってしまった。
『武山岬』。言うまでもなく、一番の容疑者だ。
でも、どうして、陽輔が彼のことを知っているのか。
知っているはずがないのだ。
私は捜査について、陽輔に話したことなど一度もない。
「なに、言ってるのよ、陽輔。……私は」
「捜査については俺に話せないだろう。でも、これだけは守ってくれ。あの男には、何があっても接触するな。」
陽輔はきっぱりとそういう。
私はぐっと膝の上でこぶしを握り締める。
「どうして……。」
どうして。そのあとはうまく言葉が続かなかった。